ありす「サンタクロースはいません!」 桃華「いますわ!」





12月初旬 ショッピングモール


ありす「疑問に思ったことはありませんか?」

桃華「何がでしょうか?」

ありす「スーパーやモールにおけるフェアや特集って、移り変わりが激しすぎる気がします」

桃華「たしかに、ひとつ終わればすぐ次のイベント準備に移っておりますわね」

桃華「この間までハロウィンフェアでしたが、今はクリスマス一色ですわ」

ありす「周りを見ても、クリスマスっぽい赤や緑の飾りがあって」

ありす「あとは、ジングルベルの曲も店内放送で流れていますね」




橘ありす(12)




櫻井桃華(12)






ありす「もう2週間くらいでクリスマスイヴですから、この演出は当然だと思います」

ありす「でも、問題はそのタイミングです!」

ありす「クリスマス演出に移行するタイミングが早過ぎます!」

桃華「そういえば、ハロウィンが終わったあとに、いつの間にかこうなっていたような……」

ありす「そうです」

ありす「全部のお店がそうではないかもしれませんが、少なくとも11月初週にはもうクリスマス装飾をしてジングルベルが流れていました」

ありす「まだ11月なのにですよ? ハロウィン終わって数日ですよ?」




桃華「クリスマス商戦なのでしょうね」

ありす「クリスマスに限りません」

ありす「それが終わったらすぐお正月の飾りと演出に切り替わって」

ありす「元旦から10日くらい経過すると、今度は節分とバレンタインデーがセットで来ます」

桃華「そして、バレンタイン特集が終わるとすぐにホワイトデーの雰囲気になりますわね」

ありす「ポンポンと切り替わって、今が何月かわからなくなりそうです」




桃華「切り替えが早いのは、わたくしも少し感じます」

ありす「ですよね?」

桃華「でも、これはこれで仕方ないとも思いますわ」

桃華「クリスマスグッズやバレンタイン関連商品は、その日が過ぎたら無用になりますもの」

桃華「同じ量を1週間で売るのと、1ヶ月前から売るのとでは……」

桃華「当然、期間が長いほうが売れますでしょう?」

ありす「うーん、それはたしかに」




桃華「それに、1ヶ月や数週間前とはいえ、事前にクリスマスが近いことがわかると」

桃華「『あぁ、もうすぐクリスマスか〜』って、ちょっとわくわくしません?」

ありす「します!」

ありす「それがお店の思惑だとわかってはいるのですが」

ありす「それでも、うきうきしちゃいますね。どうしても」

桃華「うふふ、そうでしょう?」




ありす「クリスマスかぁ……」

桃華「クリスマスといえばクリスマスプレゼントですわ」

桃華「ありすさんは、どのようなプレゼントをお願いするのですか?」

ありす「どうしようかなぁ……あんまり高価だとお母さんも困るだろうし」

桃華「あら、お母様に買っていただくのですか? サンタさんにはお願いしませんの?」

ありす「サンタさん?」

桃華「ええ。クリスマスならサンタさんでしょう?」




ありす「……桃華さん」

桃華「はい?」

ありす「サンタさんは、サンタクロースは、いないんです」

桃華「まあ、ありすさんったらご冗談を」

ありす「いや、いないんですよサンタクロースは」

桃華「そんなはずはありませんわ」

ありす「ありませんわ、って言われても……」




桃華「わたくしの神戸のお家では、この時期になると親戚を招いてクリスマスパーティーを行いますが」

桃華「パーティーの途中でサンタさんが登場して、子供達にプレゼントしてくれますわよ?」

ありす「はあ」

桃華「白いおひげで紅白衣装のおじい様ですから、あれはサンタさんです」

ありす「それ、パーティーを盛り上がるために、サンタクロースの衣装を着たおじいさんだと思いますけど」




桃華「他にもありますわ」

桃華「クリスマスイヴの夜に寝て、朝起きてベッドの近くを見ると……」

桃華「かわいいリボンでラッピングされたプレゼントが!」

桃華「あれはサンタさんが置いていってくださったのですわ♪」

ありす「それは桃華さんのお父さんやお母さんが夜中に置いていったんですよ」

桃華「もうっ、ありすさんは夢がありませんのね!」




ありす「サンタクロースがプレゼント置いて行くのを、桃華さんは見たのですか?」

桃華「いいえ。見ておりませんわ」

ありす「じゃあサンタクロースが置いたかどうかわからないじゃないですか」

桃華「クリスマスに見知らぬプレゼントがあったら、それはサンタさんが来たということでしょう?」

ありす「ちょっとそれは……飛躍しすぎじゃないですか?」

ありす「証拠も何も無いのに」

桃華「いいえ、あれは絶対サンタさんですわ!」




ありす「例えばですよ? ここに今、私の横に透明人間がいます」

ありす「見えます?」

桃華「見えませんわ」

ありす「私にはわかるんですよ、ここに透明人間がいるのが」

桃華「透明なのにですか?」

ありす「正直、私にも見えません。見たことありません。だけど、透明人間が存在するって信じているから、いるのがわかるんです」

桃華「それ、ただの思い込みではありませんの?」

ありす「そう。そういうことです」




ありす「サンタクロースが置いたのかわからないのに、サンタクロースが来たって思って」

ありす「その理由が『クリスマスイヴだから』というのは、こじつけなんじゃ……」

桃華「……」

ありす「桃華さん?」

桃華「……ですわ」

ありす「えっ?」

桃華「ひどいですわ!」




ありす「な、何が」

桃華「わたくしはサンタさんを信じております。こじつけとか証拠とかで構いません」

桃華「いると信じている、それが理由です!」

桃華「それを……自分がいないと思っているからって否定して……」

桃華「論破して楽しいですか!? 満足ですか!!」

ありす「私は、そんなつもりじゃ……」

桃華「そのつもりじゃない言葉に、わたくしは傷ついたのですわ!」




桃華「……サンタさんは良い子にしかプレゼントを渡さないのでしたね?」

桃華「今までありすさんはサンタさんの良い子範囲から対象外だから、代わりにお母様がプレゼントを差し上げていたのではありませんこと?」

ありす「なっ……」

ありす「わ、私が悪い子だとでも言うんですか!!」

桃華「お母様がプレゼントをくださるのでしたら、そうでしょう?」

ありす「お母さんがプレゼントをくれるのは、サンタクロースがいないからです!」

桃華「サンタさんはいます!」

ありす「いないんですよ!」




桃華「……フンッ」

ありす「……ふーんだ!」

桃華「……」

ありす「……」

ありす「……こんな気持ちでショッピングしても楽しくありません」

ありす「私、もう帰ります……」

桃華「ええ。わたくしも……」




後日 事務所


ありす「……」

桃華「……」

社長「P君、P君ってば」

モバP「はい」

社長「ちょっと小声で申し訳ないんだけどさ、何があったの?」

モバP「いや……自分もさっぱり」

社長「プロデューサーでしょう?」

モバP「さすがにオフのプライベート中の出来事までは把握できないですよ」




モバP「まぁ、見ればわかると思いますけど、ケンカ中みたいで」

社長「理由は?」

モバP「さぁ……? ただ、二人でショッピングに行くって聞いたので、たぶんその最中に何かあったんじゃないかと」

社長「あの二人が口聞かないほど不仲になるなんて初めてなんだが」

ちひろ「私、聞いてきましょうか?」

社長「そうだね」

モバP「それとなくお願いします」




ちひろ「ねぇ、ありすちゃん」

ありす「はい」

ちひろ「桃華ちゃんと何かあった?」

ありす「いえ、何も……」

ちひろ「そうは見えないんだけどなぁ。だって、二人とも悩んでいる顔しているもの」

ありす「……そう見えますか?」

ちひろ「ええ。もし悩み事なら、同じ女性として出来るだけ助けになってあげたいから」

ありす「ちひろさん……」




ありす「私はサンタさんはいないと思っているのですが」

ありす「桃華さんはいると言い張っています」

ありす「ちょっと言い過ぎたかな……って最初は思ったりしたんですよ。必死になる桃華さんを見て」

ありす「でも……それから私や母を絡めて馬鹿にしてきて。さすがに怒りましたよ」

ちひろ「そうだったの……」




ありす「ちひろさんは、サンタクロースの存在を信じていますか?」

ちひろ「わ、私? えっと……」

ありす「やっぱりいいです」

ありす「どっちの意見にしろ答えを聞く勇気が、まだ私にはありません」

ちひろ「あのね、ありすちゃん……」

ありす「大丈夫です。大丈夫」

ちひろ「あぁ……」




ちひろ「桃華ちゃん」

桃華「……ちひろさん」

ちひろ「もしかして、ありすちゃんと何かあったりした?」

桃華「……」

ちひろ「カワイイ顔が暗くなって台無しよ?」

桃華「ダメですわね。こうやって、他の方々にも心配をかけてしまうという時点で、ダメですわ」

ちひろ「悩み事なら相談して欲しいの。事務員だけど、私も力になれると思うから」




桃華「……サンタさんはいますわ」

ちひろ「サンタさん?」

桃華「ありすさんとは、サンタさんがいるかいないかで舌戦になって、今こうなっております」

桃華「サンタさんはいます」

桃華「見たことないですが、います。見たことないから存在しないなんて、そんな理屈……わたくしは……」

ちひろ「桃華ちゃん……」




桃華「ちひろさん。サンタさんはいると思いますか?」

ちひろ「私は……」

桃華「あ、いえ、結構ですわ」

桃華「このような質問を投げかければ、どう答えて良いか悩まれることくらい、わたくしも知っております」

ちひろ「そんな」

桃華「……わたくしは、平気ですわ♪」

ちひろ「……」




ちひろ「二人の意見を聞いてきました」

ちひろ「どうやら、サンタクロースがいるいないで口論になったみたいです」

モバP「サンタクロース?」

社長「へぇ〜、子供らしいかわいい理由じゃないの」

ちひろ「桃華ちゃんがいる派、ありすちゃんがいない派ということです」

モバP「なるほどなぁ」

ちひろ「夢見る桃華ちゃんに対して、現実主義のありすちゃんがいないと言い張った……。事を突き詰めればそんなところですね」




社長「しかし、難しい問題だね」

社長「ソリに乗ってプレゼントを配るサンタクロースなんていないわけだから、結論から言えば橘君に軍配が上がる」

ちひろ「ですが、桃華ちゃんに『サンタさんはいない』と言ったところで解決はしないと思います」

モバP「怒ったり、すねたり、むしろ事態が悪化しますね」

社長「根拠も無く『いる』って答えれば、橘君がむきになるだろうし」

社長「ふーむ、こういうのは当人達にまかせたいものだけどねー」

モバP「意見を譲らないですよ。あの二人は」




社長「子供のいざこざは、時間が経てば自然に終わる」

社長「……と、言いたいところだが、あんまり悠長にも構えてられんのよ」

社長「何日後だっけ、来週かな? あの二人共演するバラエティーあるよね?」

モバP「はい」

社長「二人ともアイドル意識というか仕事モードになるんだろうけど、万が一にもトークで険悪ムードにって可能性もある」

社長「小学生だからね、抑えられない瞬間も来るかもしれない」

ちひろ「お仕事以外でも、ギスギスしていると色々辛いと思います」




ちひろ「でも、歯がゆいなぁ……」

モバP「ちひろさん?」

ちひろ「何か悩みなら解決を手伝って、仲直りさせてあげようかなって思ったのに」

ちひろ「逆に私が悩んでしまって、アドバイスの提示すらできませんでした」

モバP「仕方ないですよ。子供達にサンタクロースについて肯定と否定の説明を求められたら、そうなります」

社長「現実か、それとも幻想か。重すぎる二者択一だしねぇ」




モバP「さて、結構難しいですよね。誰が二人の亀裂を仲介するか……」

社長「じゃあ私やるよ」

モバP「えー、社長じゃ力不足すぎやしません?」

社長「おい、それはひどいんじゃないの!?」

モバP「ちょっと! いきなり大声出さないでくださいよ!」

ありす「何かありましたか?」

モバP「いや、ちょっと会議が白熱しただけ」

桃華「あら、そうでしたか」




モバP(こういう時は、2人が慕っているまゆになだめてもらいたいんだけど)

モバP(こんなタイミングで泊まりがけの旅ロケだもんな……)

モバP(それなら他のアイドルで誰か……)

モバP(雫は真っ当になだめてくれそうだが、興奮したあの二人に囲まれたらおろおろしそう)

モバP(飛鳥は斜に構えている分、余計な一言で逆なでさせるかもしれない)

モバP(珠美は説得力無いから論外だな)

モバP「説得の適役が誰もいねぇ……」




社長「説得のための適役ならいるじゃん、ほれ」

モバP「誰ですか?」

社長「君しかいないだろう君しか」

モバP「俺ッスか!?」

社長「あの2人が異性であるにも関わらず全幅の信頼を寄せているのは、他でもない君なんだから」

社長「千川君もそうは思わない?」

ちひろ「そうですね。Pさんは信頼されてますから」

モバP「何とかできるのかなぁ……」




社長「さっき、プライベートまでは把握できないって言っていたよね?」

社長「公私問わずに幼い彼女らを支えてあげるのも、プロデューサーとして大事なんじゃないかな」

モバP「ちひろさん。社長が珍しくまともです」

ちひろ「はい。珍しいですね」

社長「どれだけ私は信頼値低いの!?」

モバP「まあまあ、冗談ですよ」




モバP「でも、二人に今の道を選ばせたのは自分ですから」

モバP「こういう事態を収めるのも、プロデューサーとしての努めだと思います」

社長「ああ。是非とも、頼む」

社長「まぁ、二人の不機嫌顔もレアだからなかなかカワイイんだけどな!」

モバP「やりませんよ、そういうこと言っていると」

社長「冗談だって! いや、カワイイと思っているのは本当だけど! とにかくお願いね!」

モバP「はいはい……」




モバP「ありす、桃華、ちょっと良いか」

ありす「はい」

桃華「何でしょうか?」

モバP「土曜日に、一緒に飯でも食いに行かないか? あと買い物とかも」

桃華「Pちゃまと……ありすさんとですか?」

ありす「3人で?」

モバP「うん」




ありす「3人……」

桃華「……」

モバP(お互い顔を見て、表情も変えずに目を反らしたか)

モバP(犬と猫のケンカのような、正面から睨み合い罵り合いみたいな形では無いと)

モバP(よし、状況がひとつ掴めたぞ!)

桃華「顔がニヤついておりますが」

モバP「そうか? 気のせいじゃないかな」




ありす「……買い物って、突然何ですか?」

モバP「ここ、小規模な事務所だろう? 親睦みたいな感じで、暇があればアイドル達ともプライベートで交流しているんだよ」

桃華「そうなのですか? 初耳ですわ」

ありす「私もです」

モバP「言って無かったし、最近忙しかったからな!」

モバP「他の子達とは最低でも今まで1回以上は、飯食いに行ったり用事に付き合ったりとかした」




モバP「例えば……珠美の場合は」

モバP「ちょうどその時期が学園祭だったから、是非とも学園祭に来てくれって言われたから、行ったよ」

モバP「これも修行です! って一緒におばけ屋敷に誘われて、一緒に入ったんだ」

モバP「そうしたら……なんと」

桃華「ど、どうしたのですか?」

モバP「珠美がオバケ怖くて叫ぶわ腰抜かすわで、もう大爆笑だった!」

ありす「Pさんも大概人が悪いですよね……」



脇山珠美(16)



※今回未登場




モバP「特に大変だったのは雫の時だったな。岩手まで行って牛舎の雪下ろしを手伝わされた」

桃華「岩手県まで!?」

モバP「是非一緒にお願いしますねー、って頼まれてさ」

ありす「雫さんの笑顔は……断りづらいですね」

モバP「しかも、今週暇か? って聞いたのは俺からだし。断れない」

モバP「でもイイモノが見られて満足できた」

ありす「イイモノ? 大雪ですか?」

モバP「ああ、冬しか見られない姿だ!」

モバP(やたらパワフルに雪掻きをする雫の姿は、あの場所でしか見られないだろうからな!)




モバP「ちょうど今週末は土日の仕事も無いし、どうかな?」

モバP「昼飯はもちろん、多少の買い物なら俺が出すぞ!」

桃華「わたくしは別に、構いませんわ」

モバP「おっし! ありすは?」

ありす「……Pさんがどうしてもって言うなら」

モバP「あぁ、用事あるなら無理しなくても大丈……」

ありす「よ、用事なんてありません! 行けます! 行きます!」

モバP(わかりやすいなぁ、この子)




モバP「それじゃあ、あとで時間合わせようか。迎えに行くから」

ありす「……はい」

桃華「了解しましたわ……」

モバP「妙にテンション低いな。やっぱりやめようか?」

桃華「大丈夫ですわ!」

ありす「やめるのをやめてください」

モバP(わかりやすいなぁ、この二人)




土曜日 Pの自家用車内


ありす「……」

桃華「……」

モバP(助手席に荷物を置いて、わざと後部席に二人並べる感じにしたが、盛り上がらないな)

モバP(ケンカ中だから当たり前か)

モバP(今、隣り合った状態で二人は何を考えているのやら)

モバP「……」

ありす(Pさんの隣が良かった)

桃華(Pちゃまの隣に座りたかったですわ)




ありす「Pさん」

モバP「はいよ」

ありす「Pさんはサンタクロースを信じていますか?」

モバP「……サンタクロースねぇ」

桃華「そうですわね。Pちゃま、信じているか否か教えていただけません?」

モバP(直球で来ちゃったか。どうしよう、これ)




モバP「じゃあ二人はどうよ? いると思う?」

ありす「質問に質問で返すのはマナー違反ですよ」

モバP「俺の意見によっては片方の味方になって、もう片方は孤立するかもしれない。そういうのはちょっとな」

モバP「まず、そっちの主張を聞いてみたい」

桃華「います」

ありす「いません」

モバP(意志が固いな……)




ありす「改めて、Pさんの意見をお願いします」

モバP「うん」

モバP「俺も昔はサンタさんを信じていたよ。プレゼントくれるんだ、って」

モバP「けど、高学年のクラスになってくると、友達の間でもサンタさん否定派が大多数になってきて」

桃華「……そうですの」

モバP「もしかしたらいないのかな……俺の思い込みかな、なんて考えた」

モバP「ところが!」




モバP「サンタさんを信じにくくなってしばらく経った頃」

モバP「デンマークのグリーンランドに、国際サンタクロース協会なる組織があることを知った」

ありす「サンタクロース協会……?」

モバP「グリーンランドの長老サンタクロースに選ばれた人が、世界公認のサンタさんとして選ばれるらしい」

桃華「サンタさんに公認・非公認があるのですか!?」

モバP「そうらしい。俺もさすがにご本人は見たことないけど」

モバP「ほら、ありす。こういう時のタブレットだぞ?」







ありす「何か……それっぽいものが……」

桃華「ちょ、ちょっと見せてくださいまし!」

ありす「何語なのかさっぱりわかりませんが、何となくサンタクロースのことが書いてある気がします」

モバP「ちょうど赤信号だから見ても良いかい?」

モバP「おぉ、このサイト。ここは、その協会が年に一度やる世界規模のサンタ会議と、そのイベントについての公式サイトだ」

モバP「デンマーク語だからまったくわからないけど、たぶんそう」

桃華「世界規模の会議? サンタさんが?」

モバP「ここまで来ると『サンタ サンタって何だ』みたいなリアクションになるよな。俺もそう思った」




モバP「ちなみにNORADも人工衛星使って毎年サンタクロースの移動ルートを追跡しているらしい」

ありす「そんなことしているんですか!?」

桃華「それではサンタさんがテロリストみたいではありませんか!!」

モバP「俺に言われても……」

モバP「NASAもあれなんだよ。人類の叡智を駆使して、子供達に夢を与えようとしているだけなんだ。きっと」

ありす「逆に現実を見せられている気分ですが……」




モバP(良い傾向だ)

モバP(二人とも気づいてないみたいだが、さっきまで無口だったのに一緒に話したりタブレット見たりしている)

モバP(内心、相手を嫌ってなんかいなかったんだ)

桃華「ほら、ありすさん! やはりサンタさんは実在するのです!」

ありす「で、でも……」

ありす「会議にしろ衛星の追跡にしろ、私はまだサンタクロースを見たことがありません!」

モバP「あー、それ言われると俺も何とも言えないんだよなー」

桃華「Pちゃままで!? さっき、いると言ったではありませんか!!」




モバP「たしかにサンタクロースはいるかもしれない」

モバP「しかし、ありすの言った通り、ソリで空を飛んでいたり、家に入ってプレゼントを置くサンタクロースを見たことが無い」

モバP「だから、絶対にいるんだ! って俺が言っても説得力が……」

桃華「でも……見たことが無いだけでいるかもしれませんわ!」

ありす「いないかもしれないじゃないですか!」

桃華「じゃあ、いないことを証明してくださいまし!」

ありす「それは、でき……できませんけど! 無理ですけど!」

桃華「何でそんな自信持って認めたのですか!?」




ありす「……」

桃華「……」

モバP「……」

モバP「今から、サンタクロースに関する不思議な昔話をしようと思う」

モバP「語っても良い?」

ありす「……はい」

桃華「……ええ」

モバP「わかった」




モバP「あれは俺が小学生だった頃……」

モバP「ゲームが好きな俺は、サンタクロースにゲームをお願いした」

モバP「ニンテンドー64本体と、振動パック対応版スーパーマリオ64と、振動パックを1セットでください! って」

ありす「……ちょっと欲張りすぎでは?」

モバP「全部で25000円くらいになるから、さすがに頼みすぎたと思った」

モバP「その夜、わくわくドキドキしつつも眠りについた」

モバP「わくわくしすぎてちゃんと寝付けなかったのか、夜中に目を覚ましたんだ」




モバP「時計を見ると午前3時過ぎ、まだ太陽すら昇っていない」

モバP「もしかしたら、と期待してベッドの下を覗くと……」

モバP「……プレゼントがあった!」

モバP「もう嬉しかったね。テンション上がって眠気なんかぶっ飛んだもん」

桃華「欲しいものが置いてあったら嬉しいですものね」

ありす「それはサンタクロースではなくPさんの親が……」

モバP「とにかく最後まで聞いてくれ」




モバP「まだ朝じゃないからプレゼントには手を付けず、しゃがんだまま眺めていた」

モバP「その時」

モバP「窓の外から聞こえてきたんだ」

モバP「『シャンシャンシャンシャンシャンシャン……』という音が」

ありす「!?」

桃華「!!」

モバP「そうだ、サンタクロースがソリに乗っている時に鳴る、あの鈴の音だ」

モバP「ビックリしてカーテンと窓を開けたが、何もいなかった。そもそも夜だから見えない」




モバP「後々、プレゼントは親が買ってきたものだとわかった」

モバP「じゃあ、あの鈴の音は? あの時は完全に目が覚めていたから、寝ぼけたわけでも幻聴でも無かったのに……」

モバP「もちろん、夢でも無い」

モバP「そんな子供の頃の不思議な思い出」

モバP「まぁ、誰も信じてくれないんだけどね」




ありす「怖っ……」

桃華「アンビリーバブルですわ……」

モバP「おいっ!?」

モバP「この昔体験した不思議な出来事をホラー扱いするなよ!」

ありす「本当にあった怖い話とかの類ですか?」

モバP「だからホラーじゃないっての!」

モバP「ほぼ必ず否定されるのは慣れたが、引かれるのは初めてだぞ……」




ありす「結局、Pさんとしてはどっちなんですか?」

桃華「そうですわ。どちらですの?」

モバP「うーん……そうだな」

モバP「うちとか、ありすの家とか、プレゼントを置いているのは親かもしれない」

モバP「けど、それとサンタクロースがいないのはイコールじゃない。あの不思議な経験をしたから、俺はなおさらそう思える」

モバP「いるかもしれないし、いないかもしれない」

モバP「好きなほうを胸に留めておけば良い」

ありす「答えになっていません」

モバP「そうかもしれないな。……さぁ、着いたぞ! 意外に道が空いていて良かった!」




ありす「まだお昼までは少し時間がありますが」

モバP「それなんだけど、俺も外せない買い物があって……」

桃華「数量限定とかでしょうか?」

モバP「そう。再版した特撮グッズの入荷日が毎週土曜日なんだ」

モバP「俺は、今すぐ買いに行きたい……!」

ありす「Pさん……」

桃華「Pちゃま……」

モバP「白けた目で見るな! 俺は単に、遠き日の心を忘れない人間なだけだ!」




ありす「自分から出かけようって誘っておいて、真っ先に済ませるのが自分の用事とは」

桃華「それはどうなのでしょうか?」

モバP「ぐっ……そこを突かれると何も言えん!」

モバP「ぶっちゃけ来週でも構わないんだけど、せっかく開店して少し経ったくらいに来たんだから良いかな〜……なんて」

ありす「はぁ……わかりました。私と桃華さんはこの辺にいるので、行ってください」

モバP「おう! 10分か20分くらいで戻るから!」

モバP「あっ、はぐれたらインフォメーションに行って迷子アナウンス頼むんだぞ?」

ありす「迷いません!」




ありす「まったくもうPさんは!」

桃華「まあまあ、きっとPちゃまもたまには童心に帰りたいのでしょう」

ありす「私達と来ているんですから、私達を優先的にしてほしいです!」

ありす「そこが全然わかっていません!」

桃華「たしかにPちゃまは紳士としての自覚が足りませんわ」

ありす「今度、ビシッと言っておきましょう」




モバP(行ったと見せかけて行ってないんだな、これが)

モバP(やっぱり二人共自然に話しているから、このまま進めば必ず仲直りの流れになるはずだ。俺がいなくても)

モバP(それまでは付かず離れずの距離から見守ろう)

モバP(まぁ、グッズとかゲームとか発売日に朝から並んで買うのが俺のセオリーだからな)

モバP(その辺の詳細をあの子らに言っていなくて正解だった)




ありす「さて、何をしましょうか」

ありす「これといって買う物とかも無いのですが」

桃華「用事があるのは、むしろPちゃまですものね」

ありす「まぁ、そこの服屋さんにでも……」

桃華「あっ」

ありす「どうかしました?」

桃華「あちらを見てくださいまし」




イヴ「Xmas限定クアドラプルベリーケーキ♪ 今週土日で予約締切で〜す♪」

イヴ「イチゴ、ブルーベリー、ラズベリーにクランベリー。4種類のベリーが勢揃い〜☆」

イヴ「クリスマスにはご家族で、お友達で、みなさんいかがでしょうか〜♪」

イヴ「お客様〜、こちらは限定品となっておりますが、いかが……」

イヴ「……あっ、別のをご予約されたんですね〜? 失礼しました〜」




イヴ・サンタクロース(19)






ありす「あれは!」

桃華「ええ!」

ありす「イチゴ!!」

桃華「そちらではありませんわ!!」

ありす「じゃあ、あの店員さんというか、売り子さんですか?」

桃華「外国の方みたいですが、とても美人ですわ♪」

ありす「本当ですね。しかも日本語がすごい流暢!」

桃華「近くに行ってみましょう!」




イヴ「こんにちは〜。ケーキいかがですかぁ〜?」

ありす「こんにちは。ケーキは、う〜ん……魅力的ですが、今は良いです」

イヴ「そうですかぁ〜」

桃華「近くで見ても素敵ですわ♪」

ありす「すみません、モデルさんですか?」

イヴ「いいえ、サンタクロースですよ〜」

桃華「こんなにサンタさんの衣装が似合う方、わたくし初めてお会いいたしましたわ♪」

イヴ「サンタクロースですからね〜♪」




ありす「たしかに、すらっとしていて、衣装に着られている感がまったくありません」

ありす「髪の色も染めて無いんですか?」

イヴ「地毛ですよぉ」

桃華「本物のプラチナブロンドをお持ちの方だなんて……羨ましいですわ……! ご出身はどちらですか?」

イヴ「グリーンランドですよ〜☆」

桃華「グリーンランド! ほら、ありすさん! サンタさんの国!」

ありす「なるほど。だから似合うんですね」

イヴ「本職ですからね〜」




桃華「グリーンランドにサンタさんはいるのでしょうか!?」

イヴ「いますよ〜。サンタクロースの村もありますよ〜♪」

桃華「ありすさん! サンタさんは実在します!」

桃華「現地の方がこうおっしゃるなら、まず間違いはありませんわ!!」

ありす「うぐっ……ですが……」

イヴ「私もサンタクロースなんですよ〜……あれ、聞こえてますかぁ?」




ありす「ですが、私はまだサンタクロースを信じられません!」

ありす「いたとしても、見たことないですから!」

桃華「強情すぎですわよ、ありすさん」

ありす「だって……」

イヴ「うーん、サンタクロースに関してワケアリって感じでしょうか〜?」

イヴ「良ければお話聞かせてもらっても良いですか〜?」

桃華「お仕事はよろしいのですか?」

イヴ「もう休憩入るから大丈夫ですよ〜」




ありす「……私はサンタクロース本人を見たことがありません」

ありす「ましてや、直接プレゼントを受け取ったこともありません」

ありす「だから空飛ぶトナカイと一緒にプレゼントを届けてまわるサンタクロースなんて……」

ありす「なのに桃華さんは、かたくなに存在を信じています」

桃華「ですから、いると思えばいるのです」

桃華「人生は物語! すべてはおとぎ話ですわ!」

ありす「ファンタジー的だから実際見るまで信じられないんです!」




イヴ「ふむふむ……」

イヴ「ところで、お二人のお名前は?」

桃華「櫻井桃華ですわ♪」

ありす「橘……あ、ありす、です」

イヴ「桃華ちゃんにありすちゃんですね〜。私はイヴって言います〜」

イヴ「私からもいくつか聞いていきますね〜」




イヴ「ありすちゃんは、どうしてサンタクロースがいないと思うんですか〜?」

ありす「見たこと無いからです」

イヴ「じゃあ、プレゼントは誰からいただきました〜?」

ありす「たぶん、母が夜中に置いたものだと」

イヴ「お母さんは、プレゼントを置いたよって、ありすちゃんに言いましたか〜?」

ありす「いいえ……朝になると『サンタさんが来てくれたのね♪』とは言いますけど」

イヴ「なるほど〜……」




イヴ「では、ありすちゃん、サンタクロースは好きですか〜?」

ありす「えっ」

イヴ「サンタクロース好きですか〜?」

ありす「そうですね……嫌いではないですよ、サンタクロースは」

桃華「そうでしたの?」

ありす「信じていないというだけで、サンタクロース自体は好きです」

イヴ「桃華ちゃんはどうですかぁ〜?」

桃華「もちろん好きですわ♪」

イヴ「そうですかぁ〜♪」




イヴ「サンタクロースもお二人のことが大好きですし、ちゃんと良い子にしているかも見ているんですよ〜☆」

イヴ「ただ、これといって姿を見せる理由も無いから、みんなの前に出てこないだけなんですね〜」

ありす「どうしてわかるんですか」

イヴ「私がサンタクロースだからですっ!」

ありす「ふふっ、何ですかそれ?」

桃華「ええ。まるで本物のサンタさんみたいですわね、うふふ♪」

イヴ「あー、信じてませんね〜?」




ありす「じゃあ、どうして姿を見せてくれないのですか?」

イヴ「それはですね……聖ニコラウスの伝承をご存知ですか〜?」

桃華「わたくしは存じませんわ。ありすさんは?」

ありす「当然、調べています。サンタクロースの名前の元になった人のお話ですね!」

イヴ「すごいすごい! よく知っていますね〜!」

ありす「ふふん」




桃華「どのようなお話なのですか?」

ありす「簡単にまとめると、聖ニコラウスさんという人が正体を隠して人助けをしたんですよ」

ありす「貧しい家の煙突から金貨を投げ入れた時、靴下に入ったそうです」

ありす「これがクリスマスプレゼントと、プレゼントが靴下に入っていることと、サンタクロースが煙突から入ることの元ネタになったそうです!」

イヴ「完璧です〜。ありすちゃん頭良いですね〜☆」

ありす「ふふふん」




桃華「サンタさんにそんなエピソードがあったなんて!」

ありす「ちなみに聖ニコラウス、つまり『セントニコラウス』という読みが、最終的にサンタクロースになったとも言われていますよ」

桃華「それも知りませんでしたわ!」

ありす「サンタクロース周りのエピソードって意外と面白いのが多いですから、一度調べてみると良いですよ」

ありす「で、結局これがどう関係しているんですか?」




イヴ「プレゼントを貰うと、嬉しい! って思いますよね?」

イヴ「笑顔になりますよね?」

イヴ「喜ぶみんなの姿を見ると、お父さんやお母さんも笑顔に。みんなハッピー!」

イヴ「みんなが笑顔の幸せな姿を見ることが、サンタクロースの幸せですからぁ〜」

イヴ「わざわざ出て行かなくても、それを離れて見ていられれば充分なんです〜」




ありす「サンタクロースの幸せ……」

イヴ「はい♪」

ありす「……私、悪い子ですね」

桃華「ありすさん?」

ありす「仮にサンタクロースが本当にいて、プレゼントを持ってきたとすれば」

ありす「『サンタクロースなんていない』『プレゼントは親が用意した』なんて言い切ったら、全否定したら、その思いを裏切ることになります」

ありす「少なくとも、私がサンタクロースの立場なら悲しみます」

ありす「ダメですね、私」




ありす「ごめんなさい桃華さん」

ありす「サンタクロースなんかいないんだって言うことは、桃華さんの考えを否定するものでした」

ありす「その気持ちも理解しないで……ごめんなさい」

桃華「そんな、気にしないでくださいまし」

桃華「わたくしこそ……ありすさんが良い子じゃないから、サンタさんが来ないなどと……」

桃華「ひどいことを言ったわたくしこそ悪い子ですわ」

桃華「申し訳ありません……」

ありす「桃華さん……」




ありす「桃華さん」

桃華「はい」

ありす「あんなこと言ってしまいましたけど、許してもらえますか?」

桃華「もちろんですわ! あと、わたくしも……」

ありす「私も、もう気にしていませんから大丈夫ですよ! 水に流しましょう!」

桃華「ありすさん……! 感謝いたしますわ♪」

ありす「こちらこそ、ありがとうございます!」




イヴ「仲直りできましたか〜?」

ありす「はい!」

桃華「そもそも、さっきから普通に話していましたわね」

ありす「そういえばそうですね」

イヴ「仲良しさんが一番ですよ〜」

モバP「いたいた。おーい探したぞー」

ありす「あっ! Pさん!」

桃華「遅いですわ!」




モバP「ごめんね、待たせちゃって」

桃華「Pちゃま、レディーをエスコートするのは殿方のつとめですわ!」

モバP「そうだな。ちょっととはいえ用事に出ちゃったのは申し訳無い」

ありす「おもちゃの買物は終わりましたか?」

モバP「え? あーあー、人気だから開店前に整理券配っていたみたいで買えなかった……かな?」

モバP(行ってないけど)




ありす「クラスの男子といいPさんといい……」

桃華「何がそんなに人気なのですか?」

ありす「そうですよ。さっぱりわかりません」

モバP「グッズは年齢問わず大人気なんだぞ。生半可じゃない。オーメダルセット01が発売した時の話聞くか?」

ありす「求めて無いので別に良いです」

モバP「そう、あれは2010年10月23日早朝のことだった。開店30分前になるとまず店員により列が店内に……」

ありす「聞いてないですから! 話進めないでください!」




ありす「先に自分の用事を済ませたPさんには罰を受けてもらいます」

ありす「桃華さんと服屋さんに行ってくるので、待っていてください」

モバP「待ちぼうけか。これは辛い罰ですなぁ」

桃華「すぐ終わるので大丈夫ですわ♪」

モバP「了解。行っておいで」

ありす「わかりました。行ってきます」

モバP「迷ったらインフォ……」

ありす「迷いません!!」




ありす「イヴさん、ありがとうございました!」

桃華「お仕事頑張ってくださいまし!」

イヴ「はい! さようなら〜」

モバP「……こちらからも、改めてありがとうございました」

イヴ「へ?」

モバP「あの子達、サンタクロースがいるかいないかで対立しちゃって、一時期は口も聞かないほどで……」

モバP「今日はまだ大丈夫なほうでしたが」

モバP「自分なら、あのような納得させる言葉をかけられません」




イヴ「サンタクロースは、子供に夢と笑顔を与えるのがお仕事ですので」

イヴ「だから……そのサンタクロースのせいで怒ったり、悲しんだりしてほしくありません」

イヴ「それだけです♪」

モバP「子供の心をよく理解しておられるのですね」

イヴ「もちろんですよ〜。サンタクロースですから〜」

モバP「ははは、たしかに。まるで本物のように似合っていますよ」

イヴ「あぁっ、あなたも信じていませんね〜!」

イヴ(ありすちゃんに、桃華ちゃん。まだクリスマスには早いですけど……うん、ちょっとくらいならフライングも良いですよね☆)




その夜 ありすの部屋


ありす「……ん……ぅ……?」

ありす「……まだ暗い。何時だろう今……」

ありす「3時……? 寝よう……」

ありす「……あれ、何だろうこれ? ハガキ? カード?」

ありす「なんでこんなの枕のところに……」

ありす「……えっ」




――――――――――――――――――――――――――――――

ありすちゃんへ

私のせいで、おともだちとケンカになってしまって、本当にごめんなさい。
そして、仲直りしてくれてありがとう。
キミも、おともだちも、良い子なのは私がいちばんよく知っています。
これからも、おともだちやおかあさんたちと、仲良く笑顔でいてください。
24日まではまだ先だけど、キミにはちょっと早めに……。
メリークリスマス!

サンタクロースより

――――――――――――――――――――――――――――――




ありす「えっ、えっ?」

ありす「うそ……なんで……」

ありす「だって、この話を知っているのは桃華さんと……」

ありす「じゃあこのカードはやっぱり……」




週明け 事務所


桃華「ごきげんようですわ! ありすさんいらっしゃいますか!?」

ちひろ「こんにちは桃華ちゃん。ありすちゃんならそこに……」

桃華「ありすさん!」

ありす「あぁ、桃華さん。おはようございます」

桃華「ちょっとお話が……あら、そのカードは……」

ありす「私には、いまだ夢なのか現実なのか」

ありす「何が書いてあるか見ます?」




桃華「……やっぱり」

ありす「やっぱり?」

桃華「内容こそ若干違いますが、わたくしの枕元にも同じカードが」

ありす「そんな……!」

ありす「だとしたら、本当に」

桃華「そうでしょうね」

ありす「サンタクロース……いや、サンタさんが……」




モバP「戻りました」

社長「戻ったよー。おっ、櫻井君じゃないか! おっすおっす!」

桃華「ごきげんようですわ♪」

ちひろ「お疲れ様です。どうでしたか?」

社長「バッチリだよ! Pくんだから当然か」

モバP「そんなこと無いですよ」

ありす「そういえば急に姿が見えなくなっていましたけど、打ち合わせだったんですか?」

社長「いやいや、先日Pくんが新しいアイドル候補生を見つけてね、さっき直接会ってお話してきたんだよ」




桃華「まあ、新しい方がいらっしゃるのですね♪」

モバP「しかもヨーロッパ出身者だ」

ありす「外国の方ですか!?」

モバP「おうよ。国籍が外国とかじゃなくて、普通に外国出身だ」

桃華「そんな方、一体どうやってスカウトできたのですか?」

モバP「みんなと同じ、ちょっとしたきっかけさ。きっかけ」




モバP「一緒に来てもらったから、せっかくだから挨拶しなよ」

ありす「え、ど、どうしましょう! 何語しゃべれば良いんですか!?」

桃華「ありすさん! ここはとりあえず英語さえ話せばなんとなく通じますわ!」

ありす「無理ですよ英語も! 話せないです!」

モバP「ちゃんと日本語で会話できるから大丈夫だっての。……あぁ、どうぞ入って」

イヴ「どうも〜」

桃華「あっ!?」

ありす「い、イヴさん!!」

イヴ「ありすちゃんも桃華ちゃんもお久しぶりです〜。あ、まだ2日くらいしか経っていませんでしたね〜♪」




ちひろ「お知り合いだったのですか?」

モバP「土曜日にありすや桃華と出かけた時に、出会いまして」

社長「千川くんには詳しい紹介はまだだったね。こちら、イヴ……サンローランさんだっけ?」

イヴ「違いますよぉ。それはブランド品ですぅ」

モバP「そういう小ボケは良いですから」

社長「つれないなぁ。グリーンランド、つまりデンマーク王国出身のイヴ・サンタクロースさんだ」




ちひろ「サンタクロース? 珍しい名字ですね」

イヴ「行く先々でそう言われます〜」

社長「サンタクロースといえばクリスマスだな。時期的にそろそろか」

モバP「サンタクロースの衣装もよく似合うんですよ」

イヴ「サンタクロースですからね〜」

社長「おっ、良いね〜。その売り出し方。衣装も似合うとかクリスマス時期にピッタリ!」




モバP「狭いけどゆっくりしていってね。こっちは色々とか書類作るから」

イヴ「わかりました〜」

ありす「イヴさん、どうしてここに?」

イヴ「Pさんにスカウトされたんですよ〜」

ありす「もしかして、Pさんを待たせたあのタイミングで?」

桃華「さすがPちゃま……抜け目が無いですわ……」

ありす「でも実際イヴさん美人ですからね」




桃華「そんなすぐに決めたということは、前々から興味がお有りでしたの?」

イヴ「いいえ。でも話を聞いて興味が出ました〜」

イヴ「子供や、大人や、みんなを心から笑顔にするお仕事。アイドル……」

イヴ「まるでサンタクロースみたいじゃないですか〜♪」

ありす「サンタクロースですか。その発想はありませんでした」

桃華「でも、間違ってはおりませんわ。どちらも笑顔を運ぶのですから」

イヴ「クリスマス以外もみんなを笑顔にできるなら、私は最高に幸せです♪」




ありす「あの、イヴさん」

イヴ「どうしました〜?」

ありす「サンタさんの存在、この間よりも信じられるようになりました」

イヴ「本当ですかぁ? もしかして、お手紙やメッセージをもらったとか〜」

ありす「そ、そうです! お手紙もらいました!」

桃華「名前も入っておりましたわ!」

イヴ「それは良かったですね〜☆」

イヴ「サンタクロースはちゃんとみんなのことを見ていますからね〜」

イヴ「時にはクリスマスに関係無く、素敵なプレゼントも用意していますから。例えば……」




モバP「おっ、雪だ。初雪か」

社長「本当だ。この時期に珍しいな。雪が降るほど寒くは無い気がしたが」

ちひろ「きっと上空はかなり寒いんですよ」

ありす「え……? あ、本当だ。雪」

桃華「12月ですものね。冬って感じがいたしますわ」




イヴ「……こういうものとか、ですね♪」

ありす「こういうものって、この雪がサンタさんからのってことですか?」

イヴ「きっと仲直りしたお二人への、サンタクロースからの祝福ですね〜♪」

桃華「サンタさんが?」

ありす「そんなことまでするんですか?」

イヴ「それは想像におまかせしますよぉ〜☆」




イヴ「ありすちゃん」

ありす「はい」

イヴ「桃華ちゃん」

桃華「なんでしょうか?」

イヴ「それにPさん達も……」

イヴ「みんな、ずっとずっと笑顔でいましょうね〜♪」

イヴ「メリークリスマス♪」




――fin――

 


 SS速報VIPに投稿したモバマスSS十作目。
 執筆・投稿時にはサンタを追跡しているのがNASAという風に書いていたのですが……
 まとめサイトでのコメントにてNORADだったという間違いが発覚しました! この間違いはデカいぜェッー!!

 そして、作中で言っているクリスマスにサンタらしき音を聞いたのは実体験です。
 あれは小学3年生の頃の話……いまだにその謎は解明できていません。

 ですが、案外サンタさんというのはいるのかもしれません。
 だって! まだまだ科学で解明できない不思議なことってわんさかありますから!(オカルト扱い)

 

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