光「アタシにとっての正義、それは……」





光「フンフフンフーン♪」

光「この間のニチアサは本当に良かったなー」

光「スーパー戦隊。仮面ライダー。まさに日本の正義が日曜日の朝に集約されているね!」

光「あぁ、あとプリキュアもか」

光「そんなに興味無かったけど、じっくり見たらあれも面白かったし」

光「毎回名乗りシーン入れたり合体必殺技あったり、ほとんど戦隊モノだね。今度、過去作もレンタルしてみようかな」

光「……っと、少し急いで事務所に行こう」




事務所


光「お疲れ様です! 南条光、只今参上!」

早苗「こらぁー! 麗奈ちゃん待ちなさーい!」

光「おわっ」

麗奈「ハッ! このレイナサマが待てって言われて待つような良い子ちゃんだと思っているわけ?」

早苗「お姉さん、人を見る眼には自信あるの! 麗奈ちゃんが本当は良い子だって、あたしの眼には映っているわ!」

麗奈「……老眼?」

早苗「言ったわねー!!」

麗奈「アーッハハハ……ゲホッゴホッ」




南条光(14)




小関麗奈(13)




片桐早苗(28)






光 (またレイナはイタズラしているのか……)

光「おいっ、レイナ!」

麗奈「げっ! 光!?」

光「毎回毎回、子供みたいなイタズラして早苗さんを困らせたらダメじゃないか!」

麗奈「うっさいわね! アンタのほうが子供みたいな身長してるじゃないの! ちょっと入口からどいて……」

早苗「はーい♪ 犯人確保♪」

麗奈「あぁっ! ちょっ……もう!!」




光「今度は何したの?」

麗奈「別にー? Pのイスにブーブークッションを仕掛けたくらいだしー」

光「Pが怒るならまだわかるけど、なんで早苗さんが?」

早苗「……ブーブークッションに、豚の顔が描いてあるんだけど」

麗奈「ぷっ……くっ……くくく……」

早苗「顔に『片桐早苗』って書いてあって、その下に……あたしの……今の体重の数値が」

麗奈「ブフッ、アハハハハハ! エフッ、ゴホゴホッ!」




光「それは……怒られるよ」

早苗「P君にあたしの体重知られちゃったじゃないの!!」

麗奈「3サイズも知られているのに、今更体重とかグダグダ言っているわけ?」

早苗「見た目のサイズと中身のサイズは話が違うのよ!」

麗奈「うわ、中身のサイズって……すっごい切実な響き……」

早苗「うぐっ」

光「まったく……」




光「レイナ、他人が困らせるのは悪いことだぞ。心を入れ替えて、もうイタズラはやめるんだ!」

麗奈「はあー……」

光「ど、どうしたんだ?」

麗奈「アタシがイタズラするたび、偉そうに説教するなぁ、と思って」

光「当然! アタシはみんなのヒーローで、正義の味方だからね! 悪には心を鬼にする!」

麗奈「正義って何よ?」

光「えっ?」

麗奈「アンタの言う正義って、何がどう正義なの?」




麗奈「これだけいつもいつも正義だヒーローだって言っているくらいなんだから、当然ちゃんと説明できるんでしょう?」

光「それは、例えば今みたいに早苗さんやPを困らせる人を注意して……」

麗奈「ほー? “自分の中で悪人と思った人”を悪とするんだー」

麗奈「で、ここぞとばかりにその人を責めたてるわけ。へぇー」

麗奈「つまり……自分の意見は絶対に正しい! 自分こそが正義! ってことね」

光「そ、そういうことを言いたいわけじゃないって!」




麗奈「それじゃあ、アンタに正義と悪をきちんと説明してもらおうかな」

麗奈「ねぇ、早苗? この間お説教に使っていた話あるでしょ? がんばるじゃんみたいな話」

早苗「がんばるじゃん? ……あっ、『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンのこと?」

麗奈「それそれ」

光「作品の名前はなんとなく聞いたことがあるけど」

麗奈「じゃあ教えてあげるわッ! アンタの言う正義で、どう判断するか聞いてあげるからッ!」




麗奈「まず、ジャンなんとかってヤツがいて」

早苗「ジャン・バルジャンね」

麗奈「パン屋からパンを盗むの。これは悪いこと?」

光「物を盗むのは悪いことだな!」

麗奈「なんで盗んだかって言うと、貧乏で家族も自分も飢え死にしそうだったからなのよ」

光「で、でも、それでも盗むのは悪いことだぞ!」

麗奈「ふーん、悪いことをしちゃダメって思うあまり、家族を放置して餓死させるのが正しい行いなんだ?」

光「それは……いや……」

麗奈「家族を助けたいから犯罪に手を染めたわけだけど、この人は正義? 悪? どっち?」




光「命を救ったから……でも、パンを盗んでいるし……」

麗奈「それすらもわからないのに、まだ正義の味方とか言うわけ?」

麗奈「そんな状態でヒーロー面なんて笑っちゃうわッ! アーッハッハッハッハ!」

早苗「そーれ、グリグリ攻撃ー♪ グリグリグリグリ」

麗奈「あだ! あだだだだだだ!」

早苗「あのね、あたしが言いたかったのは、最終的にやさしい神父様のおかげでジャン・バルジャンは改心しましたって、こ・と・な・の・よ!」

麗奈「いたいいたいいたい!!」

早苗「それに! 今回の麗奈ちゃんは、そもそも誰の目から見ても悪いことしているでしょうが!」




早苗「ふぅ、おしおきはこの辺でおしまいにしてあげる」

早苗「麗奈ちゃんがやっぱり良い子だってわかったし」

麗奈「いったぁ……何? どういうこと?」

早苗「だって、1回しか言っていないジャン・バルジャンの話をばっちり覚えているじゃないの?」

早苗「悪いと思っていないなら、説教なんてマジメに聞かないからね。そもそも内容が頭に残らないはずよ」

早苗「それをちゃんと覚えているってことは、つまり……」

光「おぉー、すごい洞察力! さすが元・警察官!」

早苗「ふふん、これくらいは朝飯前♪」




麗奈「ち、違うんだからね! えーと……そう、あんまりにもバカバカしいから覚えていただけよ!」

早苗「そう。あたしはあの話好きだから、もう1回じっくり聞かせてあげようか?」

早苗「よりしっかり脳に染み込ませるために、グリグリをしながら♪」

麗奈「なっ……」

光「ごめんなさいって言いなよ、レイナ。それだけ言えば、早苗さんもこれ以上何もしないんだから」

麗奈「……ふんっ」




麗奈「しょうがないわね。レイナサマが特別に頭を下げてあげる」

早苗「そうそう。悪いことをしたら謝る。これが基本」

麗奈「早苗はアタシより15歳も……干支が“1周以上も”大人だからね」

麗奈「もうすぐ独身で30歳を迎えて、疲労が2日後とかに来そうだし、アタシから気を遣ってあげないとねー」

早苗「へ……へぇ……麗奈ちゃんはやさしいわねぇ……! わざわざ、やさしくしてくれる、なんて……ッ!」

光「レイナ……」

麗奈「レイナサマは自分の気持ちに正直なの」




麗奈「別にお詫びとかじゃないけど、ガムでも食べる? ほら」

早苗「いいの? じゃあ1枚もら……」

早苗「……って、痛ッ!! ちょっと、バチンって来たよ!?」

麗奈「アーッハッハッハ! ゴホッ……騙されてやんのー!」

早苗「パ、パッチンガムなんてずいぶん懐かしいもの持っているじゃない……。近所の駄菓子屋のガチャポンでハズレを掴まされた時を思い出すわ……」

麗奈「そういうこと言ってるから年寄り扱いされるのよ。オバサン」

早苗「この……!」

麗奈「隙あり! そんじゃねー! アハハハハ!」

早苗「麗奈ちゃん!!」




光「行っちゃった……」

光「正義って何、か……」

光 (悪は、間違ったことをすることだ)

光 (レイナみたいに他人に迷惑をかけたり、何かしらの被害を出すのが悪で……)

光 (それを懲らしめる、みんなの味方が正義で……)

光 (そう。助けるために悪に対して立ち向かうのが正義で、そしてヒーローだよ)

光「……たぶん」



モバP「あの2人が揃うと、ちょっとした台風みたいだと思いません?」

モバP「ドドッーと騒いで、小康状態になった後でもう1回盛り上がる感じが」

ちひろ「そんなこと本人の前で言ったらダメですよ?」

モバP「わかっていますよ」

光「あっ……P、ちひろさん、お疲れ様!」

モバP「おぉ、光! 元気か!」

ちひろ「おはようございます、光ちゃん」




ちひろ「来て早々に麗奈ちゃんたちに巻き込まれちゃったわね。大丈夫?」

光「あー、うん、問題無いよ! 早苗さんは……あんまり大丈夫じゃなかったけど」

モバP「そりゃあ、体重をバラされたらな……」

モバP「麗奈もやるならビックリ系とかの物理的なイタズラにすれば良いのに。あれは早苗さんも怒るわ」

ちひろ「Pさんもあとで色々聞かれるんじゃないですか?」

モバP「『記憶から消さないとシメるから♪』とか? あぁ、早苗さんなら言いかねない……」




光 (アタシは自分を正義の味方だと、ずっと思っていたけど)

光 (よく考えるとたしかに、あくまで自称なんだよね……)

モバP「光?」

光 (もしかして……本当はアタシの考えと違うのか? 特撮みたいな理想のヒーローは存在しないのか?)

モバP「ひかるー」

光「うぇっ!? な、何?」




モバP「さっきから、どうも上の空な気がするな。受け答えもなんとなく歯切れが悪いし」

ちひろ「体調が悪いとか?」

モバP「体調がよろしくないなら帰って休んだほうが良い。どの道、今日は打ち合わせくらいだし」

光「いや、大丈夫! アタシはいつも通り元気いっぱいだ!」

モバP「本当?」

光「もちろん!」

モバP「それじゃあ、あっちで今度出る番組の説明をするから。もしも気分がすぐれなかったら言うんだぞ?」

光「了解!」




しばらく後


光「はぁ……Pやちひろさんに余計な心配かけちゃったな」

光「ダメだダメだ! 下ばかり向いていたら、前が見えないじゃないか!」

光「ヒーローたるもの、まずは前を向かないと!」

光「とは言っても……正義と悪がどういうものかもわからないで、ヒーローができるんだろうか……?」

光「うーん」

幸子「おはようございます! 今日もボクはカワイイです!!」

光「おっ」




幸子「常日頃から思っていましたが、カワイイという四文字だけでは物足りないんですよ」

幸子「せめてキュートとも言ってほしいです! キュートでカワイイ輿水幸子!」

幸子「カワイイも2つ言えば、もっとカワイイ! キュート・キューティー・キューティクルですよ!」

幸子「……おっと、これは連呼すると『持ちネタを取らないでください!』って言われてしまいますね」

光「幸子ちゃん、おはよう!」

幸子「おはようございます、光さん。今日もカワイイですね! ボクほどではないですけど!」




輿水幸子(14)






光「カ……カワイイ? アタシが?」

幸子「そうですよ。もしかしてカッコイイのほうが良かったですか?」

光「いや……ほら、アタシよく男子と遊んでいるし、特撮とか好きだし、あんまり女の子っぽくないから」

光「カワイイって言われると恥ずかしいっていうか、こそばゆいな……」

幸子「ダメですよ、そんな気持ちじゃあ」

幸子「光さんも女の子なんですから。自分のかわいさを、もっと前面に押し出さないと!」

光「そ、そうかな?」

幸子「もちろん。なにせ、カワイイは正義ですからね」

光「正義!?」




幸子「どうしました?」

光「幸子ちゃん、カワイイことは正義なのか?」

幸子「それはもちろん!」

光「具体的にどんな感じ?」

幸子「具体的となると難しいですが、とにかくカワイイというのはすべての頂点に立つ感じですね」

幸子「このボクのように!」

幸子「さらに、歌やダンスなど他人と差を付けられる得意分野があれば、なおのこと良いですね」

幸子「そう、このカワイイボクのように!!」

光「イマイチどういうことなのか、ちょっと……」




幸子「ボクを題材に説明してみたほうが早いかもしれません」

幸子「例えば、どうしてボクが会話とか番組で言葉に遠慮が無いかというと……」

光「あ、自覚はあったんだ」

幸子「ボクもアホではないですからね。ここだけの話、実は空気を読んでいたりします!」

光「そうだったのか! 幸子ちゃん、策士みたいだね!」

幸子「ふふーん! もっと褒めてくれても良いんですよ!」




幸子「褒められた勢いで忘れるところでした」

幸子「ボクがどうして自由に振る舞えるかと言うと、それはカワイイからです!」

光「カワイイと自由にできる? 正義と繋がっていないような気が……」

幸子「それなら、光さんの好きなヒーローで考えてみてください」

幸子「正義のヒーローは敵と戦って、最後はどうなります?」

光「戦ったら……それはもちろん、勝つ! そして勝利のポーズだ!」

幸子「そうです! 最後には勝ちます!」




幸子「あとは、ほら。ヒーロー番組の正義の味方って、男性はイケメンで、女性はカワイイですよね?」

光「そういえば……みんなカッコイイな」

幸子「悪の手先は?」

光「敵のスーツは不格好だったり気持ち悪かったり……ハッ!」

幸子「ふふふ……わかりましたね?」

光「な、なるほど、見た目か!」

光「正義の味方はみんなカッコイイしカワイイ。だから、カワイイは正義……!」




幸子「ボクが色々やっても大丈夫な理由、それは『カワイイから許される』ということですよ!」

幸子「かわいさの前では理屈なんて引っ込みます。なんたって正義ですからね」

幸子「レギュラーの番組を持ったり、CDを出して歌手デビューしたり、全部カワイイからできたことです!!」

光「なんてことだ……そういう意味があったなんて!」

幸子「しかしですね、こんなカワイイボクも時には悪にならないといけないんです……」

光「えっ!? カワイイは正義じゃないの!?」

幸子「そうなんです。残念ながら」




幸子「いくらカワイイとはいえ、すべての人に許されるとは限りません」

幸子「ボクのかわいさに嫉妬したり、自由っぷりに苛立ちを隠せない人も多くいますから」

光「そっか……みんながみんな大好きってことも無いもんな」

幸子「まあ、そんな層がいたほうが良いスパイスになりますから、ボクは一向に構いませんけどね!」

光「この人すごいポジティブだ!!」

幸子「正義であるために悪にもなる……これが、カワイイという星の元に生まれたボクの宿命……」

幸子「アイドルの道は、いばらの道です!」




光「わかったよ。幸子ちゃんはカワイイからこそ何でもアリなんだね!」

幸子「ふふん、そうですよ」

光「ライブの登場演出でスカイダイビングしたり!」

幸子「はい!」

光「水泳大会で溺れかけたり!」

幸子「そ……そうです!」

光「あとは、罰ゲームでバンジーを……」

幸子「も、もういいですよ!? いやぁ、本当にボクはどのシーンを取ってもカワイイですね!!」




幸子「ですから、光さんもカワイイので正義です。ボクはそう思います!」

光「うん、ありがとう!」

モバP「幸子は何やらせても様になるからな。伊達にカワイイカワイイって連呼しているだけのことはある」

幸子「Pさんもわかっているじゃないですか! さすがプロデューサーですね! 褒めてあげます!」

モバP「空も飛んだし、水にも潜ったし、次のリクエストは何かあるか?」

幸子「何でも良いですよ! 何をやってもボクはカワイイですから!」




光「カワイイ動物とのふれあいイベントとかは? みりあちゃんが前にやっていたような感じの」

幸子「それは名案! 動物と並んでかわいさも引き立つ、最高じゃないですか!」

モバP「動物との撮影か……」

モバP「うん、次はライオンやサイとのふれあいイベントにするか」

幸子「はい! ……えっ?」

幸子「い、いやいやいやいや! なんですかそれは! いくらなんでもそんなの無理ですよ!」

モバP「何でも良いって言ったじゃないか」




モバP「かわいさを引き立たせるなら、顔がいかつい動物の隣がベストだろう?」

幸子「そうじゃなくてですね!」

幸子「えーと、できればちっちゃい……コアラとかをだっこして、お互いにカワイイの相乗効果を……」

モバP「それはオーストラリアで飛鳥とか梨沙がやっちゃったし」

幸子「ひえぇ……」

光「がんばれ幸子ちゃん! きっとカワイイ写真が撮れるよ!」

幸子「そ、そうですか? そんなに期待されたらやるしかありませんね! ふふーん!」

モバP「よし、言質取ったぞ! 楽しみにしていてくれ!」

幸子「あっ」




光「幸子ちゃんには、カワイイは正義だって言われたけど」

光「よく考えたら最近の特撮はイケメンやカワイイ敵幹部もいたりするし、見た目だけじゃ決められないな……」

光「カワイイが正義なら“かわいくなければ悪”ってなるし、それはそれで失礼な気も……」

光「ダメだ! わからないッ!」

飛鳥「どうしたんだい? 急に大声上げて」

光「あっ、飛鳥ちゃん」

飛鳥「幸子のトンデモ企画に巻き込まれたのかな? それなら叫びたくもなるか」

光「そういうわけじゃなくて。実は……」




二宮飛鳥(14)






飛鳥「……ふむ、正義とは何かって話か」

飛鳥「実に面白い命題だ。興味深い」

飛鳥「いや、今の話を聞くとキミはいたく真剣に悩んでいるように感じる。面白いと軽々しく言うのは失礼だね」

光「そんなことないよ。ちょっとわかんない程度だから」

飛鳥「明確にわからなくても仕方ないと思うよ、正義なんて」

光「やっぱり……変かな?」

飛鳥「何が?」

光「どういうことが正しくて、どういうことが間違いなんだろうって悩んでいることが」

飛鳥「恥じることは無い。古今東西の去る哲学者たちだって、常に似たような問題を考えて、自分なりの解釈をしてきたんだ」




飛鳥「かく言うボクも、似たようなことを考えたことがある。いや……考えている、かな?」

光「本当!?」

飛鳥「正義とは何か。幸せとは何か。生きるとは何か」

飛鳥「そんな当たり前のことが気になって仕方が無くてしょうがなくてね」

飛鳥「でも、大人にそのことを聞いても良い答えは返ってこない」

飛鳥「ややもすれば『そういうものだから』『生意気を言うな』とズルい逃げ方をされる。食い下がるボクも悪いんだけど」

飛鳥「そんな感じ」

光「すごいな……なんかよくわかんないけど、色々考えているんだね……」

飛鳥「別に。単に面倒くさいヤツなだけさ」




飛鳥「ボクとしては、1つの持論がある」

飛鳥「それは……このセカイには正義しか無い、って話だ」

光「正義だけ? 悪は無いってこと?」

飛鳥「ちょっと違うかな。厳密な部分は後々話すけど」

飛鳥「つまり、別の視点に変われば、その行動が正義と見える場合があるという意味さ」

光「視点……」

飛鳥「ああ。どう説明したら良いものかな……」

飛鳥「……じゃあ、今からボクがTRPGやゲームブックの要領で質問をするよ。光は自分がヒーローになったつもりでリアクションをしてくれないか」

光「ヒーローごっこみたいなものだな! わかった!」




飛鳥「ある日、見たことも無いおぞましい怪物が街に現れ、人を傷付けて建物を破壊している」

飛鳥「地球の平和を守る戦士・南条光は、その怪物を倒そうと、現場に駆け付けた」

光「無関係の人々を手にかけるなんて、許さないぞ! この南条光が相手になってやる!」

飛鳥「……と宣言すると、怪物はキミのほうを向いて」

飛鳥「『環境破壊により、このままでは近い将来に地球は死の星となる。私は人間を殲滅するために、地球の意志より生まれた』と言い放った」

光「はっ……な、何っ!?」

飛鳥「ちなみに、これは怪物がキミを惑わそうとしているのではなく、本当に地球の代弁者として出現したものとする」

光「えー、えっと……」




飛鳥「はい、おしまい」

光「あれ……続きは?」

飛鳥「あくまで説明の例え話だから。答えを迫ったわけじゃないよ」

飛鳥「キミとしては怪物への返事が浮かんだのかい?」

光「……みんなと協力して、これ以上地球を苦しめないように努力する、って言う」

光「でも、たぶん怪物は攻撃を止めないだろうから、それを言った上で……倒す」

飛鳥「相手の意図をくみ取った模範的な解答だね。ありがとう」

飛鳥「日曜日のヒーロー物でそんな展開があっても、彼らはキミと同様の選択をするに違いない」

光「誰も傷付けることなく、キレイに終われたら良いんだけど……」




飛鳥「怪物の言い分もわかる。これを聞くと地球を汚すヒトは悪で、それに対抗する怪物は正義だ」

飛鳥「しかし、その大義名分を持っていれば、60億人をゴミのように蹂躙し燼滅しても許されるのかな?」

光「ん……」

飛鳥「人間から見れば……一方的に破壊活動をしているコイツが悪に見えるだろう」

飛鳥「そして、人類を守るために立ち上がるのが……」

光「正義の味方、だね?」

飛鳥「その通り。しかし、それは人間……自分たち目線からの正義だ」





飛鳥「戦争だってそうさ」

飛鳥「片方は独立して生計を立てるほうが良いと主張する。もう片方は支配下にあったほうがまとまると主張する」

飛鳥「これが火種になって、ドカン」

飛鳥「2つの宗教の宗派がどちらも『うちの教えによればお前たちは正しくない』と主張し合う」

飛鳥「で、ドカン」

飛鳥「歴史なんてその繰り返し」

飛鳥「セカイには“正義”しか無い。なぜなら、みんな自分こそが正しいと思っているから」

飛鳥「逆に、セカイには“悪”しか無いとも言える。みんな理由を付けて勝手なことをするから」




光「正義は勝手なこと、か。じゃあアタシは……」

飛鳥「勘違いして欲しくないから言っておくけど」

光「うん?」

飛鳥「ボクは、正義が何かはわからない。ヒーローじゃないから正義を知らない。哲学者じゃないから納得のできる答えも出ない」

飛鳥「ただ、これだけは言える」

飛鳥「正しさや間違いではなく、自分の行動を信じるんだ」




光「行動を信じる?」

飛鳥「麗奈がイタズラして迷惑をかけた。それをたしなめたことは、間違いだったと感じたかい?」

光「ううん。だって、Pの仕事は邪魔されたし、早苗さんは怒ったし……」

光「それをダメだよって言うのは、当然だと思う!」

飛鳥「そうだね」

飛鳥「注意することが正しいと信じた結果、キミは麗奈に指摘したわけだ」

光「ど、どうかな? そんな深く考えたわけじゃないし」




飛鳥「それで良いよ。深く考える必要は無い」

飛鳥「心で感じた通りの行動を信じてみるんだ。それこそが、キミの中の正義だ」

光「飛鳥ちゃん、なんか……カッコイイな」

飛鳥「カッコイイ、ねぇ。だったらボクも幸子の言う正義に見えるかい?」

光「見える見える!」

飛鳥「それは嬉しいな。光もカワイイから、充分正義だよ」

光「本当に? ありがとう!」




飛鳥「それじゃあボクは人を探しているから、これで」

光「手伝おうか?」

飛鳥「火急なことじゃないから大丈夫。キミはゆっくりしていると良い」

飛鳥「どうしても助けが必要になったら声をかけるよ」

光「わかった。またね、飛鳥ちゃん!」

飛鳥「ああ。またね」




光「行動を信じる……なるほど」

光「でも……回り回って、その行動のせいで不幸になる人がいたとしたら」

光「アタシは、自分の信じたことに納得できるのかな……」

仁美「よっすー! 光っち、元気ー?」

光「仁美さ……おぉー! 何その衣装!? カッコイイ!!」

仁美「へへーん。今度着る慶次様風の着物アンド装具の試着だよ! 傾いてるよね〜♪」




丹羽仁美(18)






仁美「天下無双の大傾奇〜〜前田慶次の朱柄の槍にてござ候、ってね」

仁美「まっ、残念ながら槍じゃなくてマイクだけどね、これ」

光「えー、それでも似合っているしカッコイイよ! 和風ヒーローみたい!」

仁美「わかる? わかっちゃう? さすが、ヒーローの光っちは違うねー」

光「ヒーロー……」

光「そうだ、仁美さん! ひとつ聞きたいことがあるんだ!」

仁美「うむっ、くるしゅうないぞ」

光「カワイイは正義だと思う?」




仁美「カワイイは正義? 何それ?」

光「幸子ちゃんがそう言ってたから、そうなのかなって」

仁美「あー……なるほどね。あの子らしいっちゃあらしい考えか」

仁美「でも、芸能界も戦国時代も顔の良さだけじゃあ生き残れない! それだけだと一味足りないと思うね!」

光「と言うと……」

仁美「必要なのは……そう、カリスマよっ!」




仁美「人を惹きつける魅力よ!」

仁美「例えば、物怖じせずに相手に進言できる豪胆さとか。どんなことも笑って許す寛大な心持ちとか」

仁美「思わず『こいつはすごいな』と感心させるくらいの人間性、それがカリスマ!」

光「た、たしかに幸子ちゃんは先輩芸能人相手でも、遠慮無く発言してる!」

光「バカにされたりしても嫌味も言わずに笑って許してる!」

仁美「あとは、相手を気遣ったり褒めてあげたりとか。自分の魅力をうまく使っているってわけ」

光「幸子ちゃん……実はすごかったんだな……」

仁美「本人は気づいていないと思うけどね」

光「自覚が無いなら、それはそれですごい!」




仁美「さっきも言ったけどね、戦国時代も実際似ていると思うんだ」

仁美「相手に勝てなきゃ明日が無い世の中。だけどパワーだけでは天下が取れない」

仁美「カリスマで人の心を掴んでこそ勝者となれるのよ!」

仁美「代表的なのが、かの第六天魔王・織田信長だね」

光「信長って、狂暴なイメージしか無いんだけど」

仁美「そんな部分も有名だけど、人を見る目はあったんだよ」

仁美「身分や経済力関係無く、すぐれた能力を持っているなら誰でも家臣にして、幹部クラスに登用したんだから」

光「能力がある人をスカウトするのは当たり前なんじゃないの?」

仁美「この時代は……そうもいかなかったのよ……」




仁美「エリートな武士の役職になるには、お金持ちで良い武士の家柄の人だけ!」

仁美「うちの人だと、西園寺家や櫻井家……は大名レベルだから違うか。星花っちくらいの良家かな?」

仁美「農家の人とかは豪華な服とかお城とか持つ身分にはなれなかったのがこの頃」

仁美「戦いのときには、臨時で戦場に駆り出されたから、武士っぽいことはしていたけど。よく『足軽』って呼ばれているタイプがそれ」

仁美「とにかく生まれながらのエリートしか出世街道を登れない宿命ってこと」

光「やりたいことができない人もいっぱいいたんだろうね……」

仁美「きっとね。今は良い時代になったもんだよ。アタシたちみたいにアイドルにもなれるし」




仁美「信長公は、そうやって農民や下級ランクの武士をどんどんエリートにさせたから、革新的だよね〜!」

仁美「……で、なんだっけ? 正義がどうのって話?」

光「ん? カリスマが正義とか、そういう流れじゃないの?」

仁美「あはっ、ちがうちがう! アタシは単に、カワイイだけじゃダメだよねーって言いたかっただけでー」

仁美「正義か……光っちが肯定できるかビミョーだけど、アタシなりに思う話題はあるよ。聞きたい?」

光「聞きたい!」

仁美「んっふっふ。では教えてしんぜよう!」




仁美「さっきまで話していた信長公。その信長公が討たれた場所は?」

光「えーと……本能寺!」

仁美「正解! じゃあ本能寺を襲撃した人は誰?」

光「もちろん、明智光秀だ!」

仁美「はい正解! いいねぇ、光っちは歴史で良い点取れるよー」

仁美「教科書のイメージだと信長公は狂暴でおっかない。光秀さんの場合は?」

光「うーんと……イメージって言われても、敵は本能寺にあり! の人としか」

仁美「信長公を本能寺で倒した人。三日天下であっさり倒された人。そんな感じかな、教科書で習うのは」




仁美「アタシが聞かせたいのは、その光秀さんのエピソード」

仁美「光秀さんも元はスカウトってかヘッドハンティングされて来た人なんだ」

光「へぇ〜知らなかった」

仁美「この辺は別に教科書では重要じゃないから、詳しく調べると色々と面白いよー」

仁美「で、光秀さんを話す上で欠かせないのが……」

仁美「土佐の出来人こと、長宗我部元親!」




光「あぁ、知ってる! 四国統一の人!」

仁美「おほっ! 教科書じゃ習わないの人なのにに、よく知ってるね〜!」

仁美「……って、そういえば光っちは四国出身だったね。そりゃあ名前くらいは知ってるか」

光「へへへ」

仁美「元親さんは光秀さんの家臣と親戚だったから、その縁で2人は仲が良かったらしいよ」

仁美「信長公と同盟になっていて、その交渉や仲介役も光秀さんが担当していたんだ」

仁美「光秀さんのおかげで戦わないで済むってなれば、感謝もするし仲良くもなるだろうね」




仁美「ところがっ! 昨日の友が今日の敵になるのが戦国乱世!」

仁美「あるとき、信長公は元親さんに『四国を全部よこせ!』と言った!」

光「えぇっ!? そんなこと言ったら……」

仁美「うむ。元親さんもせっかく手に入れた四国をポンと渡せないさ」

仁美「2人の間は明日に戦いが起こってもおかしくない空気になっちゃった!」

仁美「慌てた光秀さんは、手紙を出したりしてなんとか2人を落ち着かせようとしました」

光「光秀さんも気が気じゃないな……」

仁美「この交渉に関する手紙が少し前に発見されてニュースになってね、いやぁビックリだったよ!」




仁美「さて、交渉の結果は……!?」

仁美「説得の甲斐あって、元親さんのほうが折れてくれました」

仁美「最低限の領地とお城以外は全部渡します。だから仲直りしましょう、って感じに」

光「はあー、よかった」

仁美「とーこーろーがーっ!!」

光「また!?」

仁美「平和になんか終わらないよ? 戦国時代だもん」




仁美「仲直りしましょうって手紙が光秀さんに来たとき……実はもう、信長公は四国に行く準備をしていたんだ」

光「そんな!」

仁美「最初から向こうの返答とか関係無く、元親さんをブッ倒すつもりだったってこと」

仁美「いつ背中を刺されるかわからない世の中だし。まぁ、こういう展開もありえるよね」

光「すぐに四国に知らせないと!」

仁美「どうやって? LINE?」

光「インターネットとかは無いから……やっぱり手紙?」

仁美「うん。けど、その情報を手紙で出しても届けるだけで軽く数日はかかるわけで」

仁美「手紙が着く頃には、鎧武者たちはもう船に乗って瀬戸内海の上に!」

光「八方塞がりだ……」




仁美「このままでは友人の命が危ない! とはいえ、信長公をお手伝いすれば、間接的に自分が友人に手をかけることになってしまう!」

仁美「マンガやゲームの世界みたいな、両方を救う都合の良い手段は存在しない!」

仁美「……いや……もしも、万が一にも! 海に出る前に信長公が倒れたら……戦いは中止だろうなぁ〜」

光「……!」

仁美「さぁさぁ、運命の分かれ道!!」

仁美「天下泰平のために、親しい友人を見殺しにするか?」

仁美「それとも、主君を倒して作戦を止めるか?」

仁美「友と国。水色桔梗を背負う明智光秀が選んだ選択は……?」

光「本能寺……」




仁美「そう。光秀さんは友人を助ける道を選んだ」

仁美「あえて主君を裏切った希代の逆賊として、400年後ですら歴史の教科書に載り続けても、友人を守りたかった」

仁美「それが、光秀さんなりの正義だったのかもしれない……」

仁美「って、アタシは思うわけよっ!」

光「そんな覚悟をしていたなんて、考えもしなかったな……」

仁美「そーら、しんみりしない! テンション下げるために言ったんじゃないんだから! ほれほれ!」

光「ちょ、あ、あははは! くす、くすぐったいいいい!」

仁美「ここがええんか? おっほっほっほっほ♪」




仁美「今のは、あくまでいっぱいある考察のうちの1つ」

仁美「400年も前の話だもん。本当は国のトップになりたかったかもしれないし、嫌がらせの恨みだったかもしれない」

仁美「でもね……」

仁美「アタシ的には、友のためにすべてを敵に回したって話のほうが……」

仁美「そっちのほうが、好き! 男らしくてアッパレじゃん!」

光「アタシもそう思う! なんか、本当のヒーローみたいでカッコイイ!」

仁美「でも慶次様には及ばないね。断然、慶次様がナンバーワン!」




仁美「そうそう、これ関連の話には続きがあるんだ」

仁美「1つは、光秀さんは生き残ってお坊さんになった話」

光「光秀!! 死んだはずでは!? ……みたいな?」

仁美「ふふっ、そうだったかもね。天海っていう正体不明のお坊さんがそうじゃないかって言われているよ」

仁美「主君を手にかけた罪滅ぼしのため、武士を捨てて仏の道へ……って考えると、ワクワクしない!?」

光「うん! ワクワクする!」




仁美「もう1つはね、光秀さんの親族が元親さんにかくまわれたって話」

仁美「強大な信長さんを潰したから、当然だけど明智家は織田軍に恨まれるよね?」

仁美「四国に逃れた親族を、友達である元親さんが保護したって言われているの」

仁美「命をかけて守ってくれた友への恩返し……って考えると泣けるじゃん!?」

光「男らしくてカッコイイ!」

仁美「ぶっちゃけ、どっちも根拠も無いし作り話みたいなやつだけど、良いよね……歴史って」

光「もっとそういう歴史のカッコイイ話って無いの?」

仁美「うはー! 光っちも歴史に興味持っちゃった感じ? いいよ、語っちゃうよー!!」




飛鳥「楽しそうだね、2人とも」

仁美「いよーう飛鳥っち! 今、歴史談議してたんだけど混ざる?」

飛鳥「それはそれで面白そうだけど、今は遠慮しておくよ」

光「飛鳥ちゃん、探していた人は見つかった?」

飛鳥「おかげさまで見つかったよ……たった今ね」

光「今?」

飛鳥「ボクが探していたのは、あなただよ。仁美さん」

仁美「アタシ?」




仁美「あちゃー。今日の仁美ちゃんはモテモテで困っちゃいますなー。慶次様風衣装のおかげかな!」

飛鳥「“衣装を見せびらかしてばかりで、時間になってもレッスンに来ない子がいる”って、トレーナーさんがね」

仁美「うげっ、マジ!?」

飛鳥「良かったね。トレーナーさんからもモテモテだよ」

仁美「あーあ、もうちょっと着ていたかったのになぁ……」

仁美「しょうがない、レッスン場へと馳せ参じますか! ありがとうね飛鳥っち!」

仁美「光っちも、今度カッコイイ歴史エピソード教えてあげるから! そんじゃ、アスタ・ラ・ビスタ!」

光「じゃあねー」




飛鳥「おや」

光「どうしたの? アタシの顔に何か付いてる?」

飛鳥「いいや。さっきよりも晴れやかな顔になったと思ってね」

光「へへ、そうかなぁ?」

光「そうだとしたら、飛鳥ちゃんのおかげだよ。あとは幸子ちゃんとか仁美さんとか」

飛鳥「ボクは思ったことを言っただけにすぎない。が、何かしら役に立てたのなら幸いだ」




早苗「はぁ……はぁ……もう、そろそろ待ちなさいってば……」

麗奈「体力は年相応なのね? 見た目は若いのに」

早苗「それは……どうもッ!!」

麗奈「アーハッハッハッハ! ゲホッ!」

ちひろ「さ、早苗さん、大丈夫ですか?」

早苗「あーもう! あたしもうダメ……内臓に響くわ……」




飛鳥「P、早苗さんはもうダメだってさ」

モバP「毎度毎度、よく飽きないな麗奈も……」

モバP「あまりうるさいのも周りに迷惑だし、早苗さんの代理で捕まえるか」

光「ちょっと待って! アタシが行く!」

モバP「光が?」

飛鳥「良いんじゃないかな。光なら麗奈を止められるだろうし」

モバP「そうか。光、頼めるか? 無理そうなら俺も行くから」

光「大丈夫! アタシはみんなのヒーローだから! まかせて!」




光「おーい、レイナ!」

麗奈「また現れたわね光!」

光「早苗さんだって疲れ果てているんだから、いい加減イタズラはやめるんだ!」

麗奈「ふん。またそんな正義の味方みたいなこと言っちゃって……」

光「ああ。アタシはみんなのヒーローだからな!」

麗奈「正義が何なのかもわからなかったアンタが?」

光「うん。だけど、今ならわかるよ」

光「アタシにとっての正義、それは……」






『ですから、光さんもカワイイので正義です。ボクはそう思います!』



光「アタシのことを正義だと思ってくれている人がいる」

光「その人の気持ちに応えてあげることが、アタシの正義だ!」

麗奈「はっ! 理由を他人になすりつけているだけじゃない!」

麗奈「ソイツに言われなきゃヒーローって名乗れないわけ?」

光「そんなわけ無いじゃん」

麗奈「はあ?」







『心で感じた通りの行動を信じてみるんだ。それこそが、キミの中の正義だ』



光「そりゃあ、レイナに言われたときは、何が正しいんだろう……自分はどうなんだろう……って思ったよ?」

光「けどさ、理屈じゃないんだ! 今までもそうだった!」

光「アタシは……みんなのヒーローに、みんなの味方になりたかった」

光「そう考えてやってきたから、これが南条光の正義だよ!」







『それが、光秀さんなりの正義だったのかもしれない……』

『って、アタシは思うわけよっ!』



光「レイナに自分勝手とか生意気なやつとか、どんな風に思われたって構わない」

光「それ以上に……」

光「みんなを怒らせたり困らせる人を、放ってはおけないからね!」

光「アタシらしくっ! それが大事!」




麗奈「ふん、偉そうに語ってくれるじゃない。だったら捕まえてみなさいよ!」

光「もちろん!」

光「いくぞぉっ! 必殺……」

光「……うわっ、レイナの足元に変な虫がいる!?」

麗奈「へっ!? ちょっ、何、どこ? どこッ!?」

光「……必殺! ナンジョー抱きすくめ!!」

麗奈「うぐぇ! し、しまった……!」




光「はっはっは! どうだいレイナ?」

麗奈「ぐっ……アンタねぇ、自称ヒーローのくせに騙し討ちとか使ってんじゃないわよ!」

光「さっき言ったよね? 理屈じゃないって」

光「早苗さーん、今がチャンスだよー」

早苗「ふふふ……最高よ光ちゃん。やっぱりあなたは正義のヒーローね」

麗奈「……ちょっと、なんで手錠なんか持ってるのよッ!?」

早苗「警察が悪者を捕まえるのに手錠を使うのは必然でしょう?」

麗奈「アンタもう辞めたでしょう!」

早苗「Amazonとかの通販で本物に近い手錠や警棒が買えるんだもの。良い時代よねぇ♪」




早苗「はい、というわけで確保」

麗奈「ぐっ! 覚えてなさいよ!」

早苗「じゃあレッスン場行くわよ」

麗奈「は? なんで?」

早苗「両手と両腕が封印された状態で、みんなと一緒にダンス・演技・ヴォーカルレッスンをしてもらうから♪」

麗奈「はぁっ!? こんな姿でみんなの前に行けるわけないじゃない!!」

早苗「おしおきなんだから恥ずかしいのは当たり前でしょう? さぁ、張り切って行くわよー♪」

麗奈「ああああああ!!」




モバP「あれでレッスンさせるのか。体力的にも視線的にもエグいおしおきだなぁ」

飛鳥「それでも麗奈はまたやると思うよ」

モバP「歴史が繰り返してしまうのは、歴史の悪いところだから仕方ない」

光「いや、そうなったとしてもアタシが止めるよ!」

光「みんなの迷惑になる行為を止めるのもヒーローの役目だからね!」

飛鳥「頼もしい限りだ。では、そのときは任せるよ。正義のヒーローさん」

光「よし! 事務所の平和は、この南条光が守ってみせる!!」

光「Pも、みんなも、これからも応援をよろしくっ!!」




――fin――

 


 SS速報VIPに投稿したモバマスSS15作目。
 これはですね、いろいろやっちゃった作品です
 前作が良い意味で盛り上がったSSなら、今回は悪い意味で盛り上がったSS。
 ちょっと取り返しのつかないミスをやらかして、それも含めて(要因自体は他にもあります)掲載されたまとめサイトで軒並み炎上してしまうという失態。
 反省のため、これを機に一旦SS書きを休止しました。今度書くときは、みんなに喜ばれる作品にしたいです。

 

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