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シャーロック・ホームズ -悪魔の娘-
発売日:1995年6月30日
開発:Frogwares
発売:インターグロー
掲載日:2017年2月7日




■世界に名だたる名探偵!







『シャーロック・ホームズ -悪魔の娘-』!!


見てくださいよこのパッケージ!!
赤く照らされる荒廃したロンドンを背に、剣を携えたホームズと銃を携行したワトソンが写る絵



この推理で解決する気なんかさらさら無さそうな感じ


非常に好みです。発売日にパケ買いしました。


自分にはわかります。これは武闘派ホームズによる『シャーロックホームズ伯爵令嬢誘拐事件』のようなアクションバリバリな感じに違いありません!
(※ちゃんとしたシャーロック・ホームズの探偵ゲームです)


これを見てプレイしたくなる人、絶対いると思います。ここに1人いるし
ぶっちゃけ購入のきっかけも、この妙に殺伐しいジャケットに魅かれたからです


で、このゲームは実はシリーズ8作目らしいのですけど、自分がプレイするのはこれが初めてです。

というか前作まではパソコンゲームだったらしく、コンシューマー版の発売&日本での発売が初という作品だったもので
シリーズ物を1からじゃなくて8から始めるというのはもはや暴挙以外の何物でも無いでしょうけど、そういう経緯があるのでしょうがない。


ストーリーは完全オリジナルで前作とも繋がりが無いので大丈夫とアナウンスされているので、初見でも大丈夫のはず。自分は大丈夫でした。
ちなみに原作のホームズファン向けネタとして、3章冒頭で原作における「花婿失踪事件」が発生しますが、数分で解決できます
(なお原作通りホズマー・エンジェル = ウィンディバンクの結論も出せますが、それ以外のオチにすることも可能。ストーリーに影響無し)

原作とか読んだこと無いし、ホームズとワトソンの名前くらいしか知らないという人もプレイでは問題ありません。
他の原作キャラですとレストレイド警部がわりと頻繁にストーリーに絡んでくる。ハドソン夫人はちょこちょこ登場。
モリアーティ教授は故人ですが終盤で回想的な扱いでちょっとだけ出てくる(名前だけ。一応セリフもある)





■なかなか燃えるストーリー展開と自由な推理


主人公シャーロック・ホームズとなり、身近で巻き起こる事件の数々を解いていくのがこのゲームのメイン。全5章構成。
ただの安楽椅子探偵じゃないですよ。ちゃんと現場に行ったり物品を調べたりしますからね。

事件が発生→現場で調査→容疑者・関係者に聴取→証言や証拠を組み立てる→追求と解決 といったシークエンスを辿ることになりますが
各々のストーリーが良いので個人的に評価が高い

行方不明になった父親を探していたら、猟奇的な真相に辿り着く1章

『競技会の表彰式の日に石像が槍を投げて男を殺した』という突飛な幕開けの2章

ホームズ宅に爆弾が投げ込まれ、実行犯を探す3章

1つのきっかけから雪崩のように起こった大惨事を捜査する4章


(ラスト5章は事件こそありますが実質イベント戦みたいなものなので割愛)


非常にホームズらしい……といって良いのか難しいですが、1度進めると「この先どうなるんだ?」「これがどう繋がるんだ?」と熱中してしまいます。


サブイベントや寄り道要素は一切無いので、その分メインストーリーにもガッツリ集中できます。


また犯人とかに関しても、1章目とかは話の道筋も単純で「この人が悪いんだろうな」って思ったら大体そんな感じのオチなんですが
4章目まで行くとアリバイが無くて動機はある怪しい容疑者が3人も4人も出てくるものだから、どれが正しいのか悩む悩む

一応言いますと本作は各章マルチエンディングなので、選んだ犯人と、有罪/無罪によっては展開が若干変わります。でも本当に若干。

各章クリア後に届く手紙の内容と、5章のアリスとの舌戦の内容が少し変わる程度。
悩みに悩んでも、その後の大筋は変わらないので気楽にできます。適当な奴を牢にブチ込んでも良し。

それに1番最後の犯人断定パートと、有罪/無罪の決定部分は、最終推理を決定する前なら何度もやり直しが利くので
自分は各章クリア前にあえて完全に間違った推論を出して、まったく違う迷推理をドヤ顔で繰り出すポンコツホームズを作るというアホな遊びをしていました
(例:殺人の濡れ衣を着せられるチャールズ卿。誤認逮捕で実刑が確定するワイルド等)

あ、ワイルドはクソウザくて腹が立つので、あえて冤罪にさせたほうが精神衛生上非常によろしいかと


こういう遊び方が正規かどうかはともかく、ゲームには熱中できます。





■ホームズらしいゲームシステム


シャーロック・ホームズは言わずと知れた名探偵。

原作でも依頼人の話し方や服装をちょっと見聞きしただけで、どういう職業だとか境遇だとかを一発で看破してましたが、このゲームにもそういう部分はあります。


このゲームでもそういうシステムがあって、例えば依頼人や容疑者に質問する際、□ボタンで相手の様子や服装をチェックできます。
スカーフを見て「流行に敏感」と判断したり、指輪を見て「資産家」と判断したり、それら複数のチェックを組み合わせて人物像を考察することで
質問や尋問の際に新たな証拠として選択肢が増えます。事件の全容を調べていきたいなら観察は必須テク。


事件の状況によっては推理から「どういう順番で事件が起きたのか」を探るパートも入ります。

クラブで石像が動いて逃げるまでの順を考察したり、足場が崩れて大惨事になる現場の発生順を探すのは結構楽しかった。
この順番を導く推理は全編通してほとんど無かったのが残念。自分はこの推理が1番好きなんですけどね。


これらのシステムのおかげで、プレイヤーはゲームをやりながら1つの証拠で10の推理をできるような、文字通りの名探偵気分。





■前触れの無いQTE要素がどうも……


マイナス点を挙げるのなら、妙にQTEが多い。それもQTE時に何をして良いのかわからないのが多い。


例えば序盤のマーシュ邸潜入捜査の場合
ホームズの潜入が気づかれそうになる→ワトソンが咄嗟の行動で注意をそらす というQTEめいたものがあるのですが
これがわかりにくい

いきなり画面がスローモーションになり、カーソルが現れるので「あ、何かするんだろうな」っていうのはわかるんですけど

初見だとどこにアクションをかけるのかとか、どうすれば良いのかがわからずにQTEが失敗します。しました。


ただし、QTEが失敗しても、失敗直前からリスタートするので何度もやり直しは効きます。ペナルティも無し。
(ホームズの操作がバレるという情けなさがある意味ペナルティみたいなものですが)


なお上記のマーシュ邸のQTEのちょっと後、「秘書が部屋に戻ってくるから隠れる」というイベントがあるのですが
これも時間制限付きのQTEだったという事実は1回失敗するまでわかりませんでした。
時間内に隠れるなら隠れるでなにか指示とかTIPSとか出してよ!!


こんな感じで、わからん殺しのQTEが後半に増えてきます。特に3章と5章。
1ミスすると即死して、また5個も6個も連続QTEをやらざるをえなくなるので面倒。まぁどうしても無理ならシーンスキップ機能もありますけど、自力でがんばったほうが達成感はあります。





■ミニゲームの難易度落差が大きい


推理や捜査の過程でミニゲームが頻繁に挿入されます。
内容は

・自動で動くカーソルを左右スティックで円の中に持って行く「盗聴」
・錠前に合う鍵を選んでこじ開ける「ピッキング」

などなど。金庫破り、地図の照合、顕微鏡での証拠観察とかパターンも様々。
ただ単に事件捜査をするだけではなく、捜査の1つ1つを非常に丁寧かつ詳細に描いているのが個人的にプラス要素。

黙々と事件のことを考えるだけじゃなくて、こういうパートが入ることによって息抜きにもなりますし。



……息抜きにならないミニゲームもあるんですけどね。
個人的に最高レベルで難しかったのが、第2章終盤のマヤのミニゲーム。
毒ガスや落とし穴等で即死する罠を回避しなければいけない部屋がノーヒントでキツイのなんの。

落とし穴部屋はまだ床で区別できるのが楽ですが、毒ガス部屋が大丈夫な床とそうじゃない床の区別ができないので難易度を跳ね上げていました。
しかも死ぬと部屋の最初からやり直しになる苦行。このご時世に往年のPC98時代のゲームのようなハック&スラッシュ要素と紙へのマッピングを求められます。


簡単で楽しいミニゲーム要素と、やたら難しい上に面白くないミニゲームの落差が激しい。これがマイナス。面倒。

難しさで言えば5章終盤の星のパズルとかもありますけど、マヤが本当にキツイ。マヤがキツすぎて以降3章分のミニゲームは全部楽勝に思えました。


☆総評☆

グラフィック B
音楽 B
ストーリー A
プレイ感覚 A
ゲームバランス B

・グラフィック:少し粗いけど、街の描写や小物への作りこみは細かい
・音楽:20世紀初頭のイギリスっぽい音楽作りは雰囲気出ている。オススメはトビー操作時のBGM。
・ストーリー:各々の事件もそうですけど、でも個人的には娘ケイトリンとホームズの家族愛が強く出ていたのが良かった。
・プレイ感覚:頭が良く肉弾戦も強いチート名探偵の気分に浸れる
・ゲームバランス:ミニゲーム系が物によってはイマイチだけど、大局的に見ればバランスは取れている





何回か上で表現しましたがシャーロック・ホームズになった気分でプレイしたい」のならオススメ

反面、単調なミニゲームの連続だったり、証拠が集まるだけ集まったらジェットコースター式にストーリーが展開する点に関しては
良い部分と悪い部分はあるので何とも言えない。
アサシンクリード シンジケートのように100年前のロンドンを広く歩き回れるわけでもないので、オープンワールドを期待した人には期待外れのはず。

ただ、全体的にゲームの難易度はヌルめなので、正直とっつきやすいと思いますからプレイして欲しいですね。トロフィーも簡単だし。




サブタイトルになっている『悪魔の娘』とは何か? 誰を指しているのか?

それはエンディングまでプレイすればわかります



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